自アンでこの話するの、もう何回目か忘れてもうた。

10年近く前のこと。
ある日の夕方ごろ、俺は電車に乗ってて、4人掛けの対面式座席の窓際の席に座ってたんだよ。
俺の隣も対面も乗客がいて埋まっていた。やがてとある駅で停車した際に、
対面の二人の乗客が降りていって、代わりにその席へ、若い女の子の二人組みが向かってきた。
対面に女の子が座ると目のやり場が無いから、俺は腕を組んで顔を伏せて寝たふりをすることにした。
で、そうしている俺に周りの人の声が聞こえてくるわけだけど、どうも先ほどの女の子二人組が、
おっさんの二人組と、俺の対面の席の前で鉢合わせになったらしく、それで女の子らは
おっさんらに席を譲ってあげたらしい。で、おっさんらが俺の対面に座ったようだ。
そのおっさんら、若い女の子に親切にされて上機嫌になって、女の子らにしきりに感謝の言葉を述べていた。
「今時こんな優しい心を思った若者がいるんだなあ」とか、おっさんのうち一人が新聞記者らしく、
「もう書いちゃうよ新聞に!すばらしいお嬢さんに出会えたってね!」とかいってね。
その中で、おっさんの一人が調子に乗ったまま、「最近の奴らとか電車で席譲ったりしないよ。
誰かが乗ってきたらすぐ寝たふりとかしやがるんだよ」と大きな声でなじるように言いやがった。
それを聞いた俺はすぐさまおっさんを張り倒したくなったけど、勇気が出なくて、結局そのままやり過ごしてしまった。
この件についてなんで腹が立つかというと、あのおっさんは本能的に、俺の外見を見た上で、
こいつなら安全だろうと判断したうえでああやっていきがったに違いないからだ。
俺がもし素人にも見分けが付くほどごつい体つきをしていたり、髪の色や服装などで
いかにもやばそうな外見をしていたら、おっさんは絶対に俺を挑発できなかったはずなんだよ。
そういう人としての汚らしさを、俺は心底軽蔑した。そのことがきっかけで、新聞記者をはじめ
マスコミの奴らも軽蔑するようになったのだ。

自アン民が泣かなかったので俺が泣いておく